政策研究ネットワーク山形 -

活動方針(26年度策定)

どんよりとした停滞感が日本社会全体を覆い続けています。社会の矛盾は、「格差」「教育」「健康」などといったかたちで断片的に語られるだけで、深まりゆく一方です。一部の業界を除き、明るい未来はいっこうに見えてきません。わたしたちは、そんな「社会」全体のありようを一変させる「何か」を望み、その「何か」をもたらすことのできない政治や行政に対して失望を深めるばかりです。

しかし、実際のところ、わたしたちは、マスメディアやインターネットメディアによる断片的な情報があふれるなか、自分の生活の「実感」を手がかりに、それらの情報を受け売りするほかなく、移ろいやすい期待と失望を繰り返しているだけではないでしょうか。わたしたちは、自分たちの生活を支えているはずの政治や行政―そして何よりも他の人たちの生活のことをどの程度本当に「知っている」のでしょうか。

「社会」から隠されたいくつもの実践知

与えられた選択肢から「選択するだけの自由」の無力さから抜け出し、未来を自らの手に取り戻す一歩を踏み出させてくれる道標はどのようなものでしょうか。社会のありようを包括的に把握し一度に変革するような知識や力などというのは幻想に過ぎません。

複雑性を高める今日の社会を実際に動かしているのは、包括的/抽象的な「机上の知」などではなく、社会のさまざまな場面に携わっている個々人の限定的ながらも切実感のある具体的な「実践の知」です。そうした実践の知は、社会全体に散らばっており、個々人の拠って立つ場所や時間の上に成り立っています。実践知は柔軟であるがゆえに、不完全で、普遍性に欠け、お互いに矛盾し合ったものもあります。

ところが、旧来の社会構造のなかでは、そうした知が表舞台に上がることはありませんでした。表舞台に出てくるのは、往々にして組織の維持や保身に都合の良い「矛盾のない」「つまらない」情報に限られてきました。あいまいなままの知を表に出せば、誤解されたり、非難されたり、責任を取らされたりといったリスクが生まれるからです。そうであれば、何も言わないことが大人の態度だということになります。人びとの生活に根ざしたリアルで「おもしろい」情報はいつまでも断片的なものにとどまり続けてしまいます。

しかし、本当のところは、「どうにもできない」とか「おかしい」といった「弱い」情報こそが、良いアイデアやイノベーティブな発想―新たな未来―を生みだすのではないでしょうか。とりわけ政治や行政には「無謬性」が求められてきましたが、政治や行政の「不完全性」こそが新たな政策形成の鍵を握るはずです。

そうした不完全性が常に開示され、その情報が人びとの実践的なネットワークをかけめぐり、みんなで解決策や提案を出し合い、それに誘発されて新たな情報が次々に出てくる。こうして、人びとの新たなつながりが生まれ、人と組織が変革し、部分最適を超える新たな社会活動や経済活動が生まれていく―そうした動的な政策=実践形成を実現する仕組みに新たな可能性を求めることはできないでしょうか。

山形の人と知をつなぐ「政策研究ネットワーク山形」

「政策研究ネットワーク山形」は、ややもすると硬直しがちな旧来の社会構造から脱却し、ここ山形から新たな動的政策形成を進めるべく、「実践知のネットワーク」をつなごうとする組織です。このネットワークは、組織や党派にとらわれず、それぞれに「実践知」を有する山形県内の人びと―企業家、政治家、行政職員、法曹、マスコミ、大学、市民団体、NPO、地縁組織等のメンバーたちによって作り上げられています。県内の生活=政策に関心のある方であれば、いつでもどなたでも参加できます。年会費用はかかりません。

2014年度からは、メーリングリストやブログなどで参加会員の取り組みを紹介していくほか、子育て、教育、就労、貧困、産業、健康、環境、地域社会など、山形における地域生活の切実かつ具体的な課題をテーマとした「ミーティング」を2か月に1回程度開催していきます。このテーマもネットワークの合議によって決定し、ミーティングでは、県内外で当該テーマをリードする活動をされている方を招いて講演を聴き、その後、ワールド・カフェ形式で講師と会員、会員間で議論と交流を行います。

ワールド・カフェとは、参加者を少人数のテーブルに分けて、その日のテーマについてお茶を飲みながら議論し、次にテーブルホスト以外は他のテーブルへ移動し、そこのホストから前の議論のサマリーを聞いてからさらに議論を深め、これを何回か繰り返した後に、各テーブルホストがまとめの報告を全員にする方法です。少人数で集まることで自由に発言をしながら、他の人のさまざまな意見にも耳を傾ける機会を増やすことができ、自由にネットワークを築くこともできます。

ミーティングの成果や各会員の取り組みについては、各会員の承諾のもと、広く社会に対しても公開していきます。こうして、「政策研究ネットワーク山形」は、組織の垣根や上下関係や立場の違いを乗り越え、具体的かつ動的な政策=実践に向けて山形の人と知のネットワークの拡大と深化を目指していきます。

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